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2022年5月13日と27日、5組ずつ計10組の皆さんに提案をプレゼンテーションしていただきました。

その後いちのメンバーで話し合いを行い、いちこやについては滝川寛明建築設計事務所にお願いすることに決まりました。

下記に、みなさんの応募作品内容と講評を発表いたします。

​いちこやの完成後、オープニングイベントにて今回の10の提案内容や模型を展示し、ご覧いただける機会をつくる予定です。

滝川寛明(滝川寛明建築設計事務所)

寄り添い、使い方を拡張する建築

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【コメント】

敷地南東に四角いプランを約45度回転して配置し、内部・外部とひとつながりの一体的な空間がつくられています。
屋上は緑化し、母屋と2階レベルで繋がり立体的な回遊が可能になっていますが、この提案のいちばんの魅力は庭から人を迎え入れる方向性が多様になること、そして、母屋もいちこやも庭を介しながらそれぞれの気配を感じて生活をしていける場がつくられていることです。いちこやとしてのさまざまな場面を享受するおおらかな環境が作り出せると感じました。

德野由美子 久保田愛 北尾一顕(新富建築俱楽部)

わたしの「よりどころ」

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【コメント】

道路(そと)と母屋のリビング(うち)とを緩やかにつなぐ曲がり道のようなプランのいちこやの計画。日常時、イベント時、場所貸し時といったさまざまな使い方に対して曲がる平面が緩やかに空間を仕切り、「母屋といちこやのお互いの良い面を引きらせる付かず離れずの関係性が築けそう」とのメンバーの意見も。ほかに、いちこやに架かる屋根のボリューム感(母屋からの見え)、内部空間と庭との連続性がもう少し活動とも連続していてほしいといった意見がありました。

伊藤孝仁(AMP / PAM) 渡邉貴明(建築設計室わたなべ)

いちのもん

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【コメント】

いちの庭の環境に「みち」と「しま」を読み取り、しまをつくるように内部空間を配置し、路地を内包した門形式で「いち」の新しい玄関としていちこやが計画されています。HPシェル状の4つの屋根が分割されたエリアにそれぞれ架かり、二つのROOMは対面してさまざまな活動を受け止めるため、独立した建物として借りる人が使いやすそうという意見がある一方で、使っていない時のイメージが難しい、活動時にもう少し庭を感じたいといった意見がありました。

岩元真明 千種成顕(ICADA)

せともののいちこや

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【コメント】

いちの敷地にある多数の陶芸作品から着想し、タイルやレンガを使いシンプルな配置計画としたいちこやを提案しています。「いちこや」「いちみち」「いちにわ」「いちへい」。母屋とこれらの要素が道路からグラデーションをなして配置された場は、より街とフラットに繋がる印象を持ちました。シンプルな配置構成な故に庭との関係性もフラットになってしまう部分が、この場所を生かすという側面で物足りなさが残りました。

葛島隆之(葛島隆之建築設計事務所)

大きな屋根

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【コメント】

軒下の空間や縁側のような使われ方をイメージし、斜めに大きな屋根を架けた下に独立した内部空間を設けています。光を透過する半透明の屋根は、敷地全体の活動を担保しつつも木漏れ日ある空間とすることが目指されています。内部空間には母屋のさまざまな家具を再配置し、既存のウッドデッキを中心とした空間構成をつくることで、母屋がもつポテンシャルをいちこやによって顕在化させようという試みには一同感嘆。ただこの場所でこれだけ大きな屋根を架けることの意味と現実性はなかなか理解されるに至りませんでした。

桐圭佑(KIRI ARCHITECTS)

いちこや - 庭そのものに暮らす -

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【コメント】

今ある日常の風景をより一層魅力的にする家、どこにいても庭の中に身を置いているような暮らしができる空間として、多様な居場所をつくりながらも一体的な形状(プラン)がつくられています。三又のプランは庭との接面がどの提案より多く、多様であると感じました。一方でそれぞれの空間が分割されてしまうため、空間を大きく使いたい場合への対応に限りがあり、その点が最後までメンバーにて議論になりました。どのような使い方をしていけるかといった点において、建築の設定に頼るのではなく、私たちのさまざまな想像力を幅広く受け入れてくれる方向性が選択されたように感じます。

後藤周平(後藤周平建築設計事務所)

いちみちとみちこや

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【コメント】

にわのみちとこやのみち、ふたつのみちによって新しい循環をつくる計画。道路からの動線を引き込み、ぐるっと庭を回れる道を通し、それに沿うように東側にワンルーム形状の空間が雁行して配置されています。土間を使ったお店のあり方やカウンターや屋台などさまざまな仕掛けを提案していただき、この場所におけるありようへの想像が膨らむ一方、私たち自身が自由度を持って場をつくりあげていく方向性についてが議論になりました。

村部塁(farm)

母屋・庭・街と共生する緑台のような小屋

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【コメント】

母屋・庭・街と共生する縁台として、内外の開放的なつながりのために延焼ライン外の範囲で取れる最長の対角に境界をつくり、南に大きく開いた三角プランの小屋が提案されています。いちこやを庭のセンターに配置し、南側に大きく開く提案は新しい発想で興味深く議論されましたが、庭側が閉じられ気味なること、開口が隣家の北側に面してしまうとあまりお庭が感じられないのが残念といった意見になりました。

南俊允(南俊允建築設計事務所)

いちのいえ 時間の変化を楽しむ家

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【コメント】

いちのコミュニティと同じようなさまざまな個性豊かなメンバーで広報なども含めた提案をしていただきました。学生さんたちと共にいちの成り立ちを細かく観察していただいた中でブックレットをまとめ、いちこやの未来の時間を想像しながら、既存母屋の空間の質をひだ状に連続させた小屋のあり方とおおらかな庭との関係性がつくられています。内土間と外土間が設定されていることに惹かれましたが、コミュニティをつくる設定の多さが現実味を持って受け止めることができなかったように感じます。

大峯竣平 堤康浩(デザインオツ)

ソラリウム

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【コメント】

ソラリウム(Solarium)と名付けられた温室のように開放的な「いちこや」。環境を確保するため南側の敷地に寄せて配置し、母屋との距離をつくっています。中央に広々と庭を配置した場がつくられているのも庭の再配置という意味で効果的に思いました。つくりこみすぎない居場所のあり方は魅力的な反面、細長いプランで南側が全面壁になると、ギャラリー的な使い方には適しているかもしれないけれど、多様な活動を受け入れることが難しく、単調な場づくりとなってしまうのではないかといった意見となりました。

【いちこやプロジェクトのコンペを終えて】

「いちこやプロジェクト」は2022年1月にコンペの開催をリリースし、5月27日に最終プレゼンテーションを終えて設計者を決定することができました。

ご提案いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

一住宅の一角に小屋(今とこれからの場)を建てる。これを公募にしたいと思ったのは、若い建築家のみなさんとつくる機会を共有したいと思ったからです。

それから、建築をつくるという出来事がどれぐらい周辺地域や人びとに影響を与えるメディアになり得るのか、そういったことに興味を持っていたからです。

今回10組のみなさんには、何度も「いち」にいらしていただき、5月に私たちメンバーの前で提案を発表していただきました。

発表時、はじめは遠くから眺めるぐらいで遠慮がちだったメンバーですが、多様な提案や緻密な模型を目の前にしてだんだんと前のめりに。提案を読み込み、この空間だったら「こんなこともできそう」このあり方だったら「あんなこともできそう」と、みんなが「いちこや」の未来を自分ごとのように思い描き、自然と意見を話し始めるのに時間はかかりませんでした。

 

みんなが新たな場所を想像するためのきっかけ、それがまさに「いちこやプロジェクト」のコンペであったと思います。

よくわからないけどワクワクすると言っていたみんなが、いま「いちこや」のかたちが決まり、その実現に向けて関わることを楽しみにしてくれています。

私は建築の力を改めて知ることになりました。

 

なんとなく集まって、何のしがらみもないメンバーたち。

みんなの想像力と行動力と期待に応えられる「ここで何かやりたい」と思える場をつくることが、建築というメディアをつくる私の役割だと思っています。

今後についても、またご報告します。

リトルメディア代表 中村光恵

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